2017年4月30日 滋賀県 草津市 森歯科医院 院長 森光伸
口腔内は日々、様々な刺激にさらされるためか良性、悪性をとわず多様な腫瘍が発生します。口腔腫瘍は内蔵腫瘍や体幹深部の腫瘍などと異なり、自分で直接見えるものがほどんどです。それにもかかわらずに放置され、致死的状況になる方もおられます。
今回は特に視認されやすい舌の先端部にある良性腫瘍を長らく放置されていた症例を報告いたします。今回の症例は決して珍しいものではありませんが、患者様の心理状態を窺い知るよい機会となりました。
初診時の主訴は舌のデキモノではなく、う蝕と歯周病治療を希望されての受診です。50歳代男性で舌尖部に潰瘍を伴う球状の腫瘍が存在します。十年ほど前から舌のデキモノは自覚はしており、時折痛むこともあったが、切るのが怖くて放置していたとのことです。良性腫瘍とおもわれますが、腫瘍中央に潰瘍あり、細胞の悪性化の可能性を完全否定はできないと説明し、やっと切除を決意されました。
良性腫瘍(線維種)の臨床診断のもと局麻下で切除。病理診断は刺激性線維種の一種であるFibro-epithelial polypでした。
術後はすぐに摂食障害や疼痛が改善され、快適な食生活ができるようになったと喜んでいただけました。我々には小さな腫瘍なのでなぜもっと早く切除しないのかと思ってしまいますが、本人にとっては様々な思いがあったんだろうと推測されます。
<術前写真>
<術後写真>