2013年09月12日 森歯科医院 院長 森光伸
下顎完全骨性埋伏智歯抜歯時に摘出した美しい歯嚢の1例
顎骨内に完全に埋伏している若い人の智歯は歯嚢と呼ばれる軟組織で覆われ、まるで服を着ているようです。思春期から20歳前後の成人の智歯を抜歯すると、智歯と歯嚢が分断されて摘出されることが多いのですが、今回は智歯抜歯時にほぼ完全な状態できれいな歯嚢に覆われた智歯を摘出することができましたので、その貴少な様子を報告します。
歯嚢(Dental Sac)は胎生期に歯の成長発育をつかさどる袋で、いわば胎児を育てる胎膜のようなものかもしれません。歯嚢は胎生6-7週で乳歯を被い、成人では智歯が萌出するまで存在したり痕跡が残ったりします。
本来この歯嚢は歯の発生過程に存在する正常組織であり、歯の萌出とともに存在意義がなくなり消失していきます。しかし、顎骨内に埋伏する歯の歯嚢に細菌感染がおこると、まれに嚢胞を形成して病的になることがあります。
< X線写真 >
歯嚢に覆われた智歯の側面観
歯囊から歯冠咬合面がみえる
歯嚢を少し剥離し歯冠を一部露出した状態
歯嚢を完全に剥離した状態