2015年5月12日 森歯科医院 院長 森光伸
ITI Congress Japan 2015 が 2015年5月9日10日に東京新宿の京王プラザホテルで開催され参加しましたので概要を報告いたします。
ITI はInternational Team for Implantology の略称で世界最大のインプラント学会です。組織本部はスイスにあり、28か国から構成されています。活動内容は国際学会はもちろん、国内ではStudy Clubなどを基幹とした国内学会が開催されております。地域活動も活発で定期的にStudy Clubで激論がかわされているようです。今回の講演内容はWebを通じて世界中のメンバーに配信されるとのことで、国内と海外の報道陣が撮影をおこなっておりました。
講演者は学者と一般の口演はなく、活動中の臨床家の指名講演のみでした。
講演内容を自分流に整理してみると、1) 長期経過症例からの考察, 2) 要介護を見据えた対策, 3) 新しいFixtureの開発, 4) 新しい上部構造とその固定法の考案, 5) インプラント周囲炎対策, 6) メインテナンス法, 7) 審美療法(歯間乳頭の保存と再建), 8) 軟組織造成と骨造成, 9) サイナスフロアエレベーションなどの審美的機能的手術療法の考察について講演されました。これらをさらに詳しく報告すると以下のごとくです。
1) 長期経過症例からの考察; 20年から30年の長期経過観察ではインプラントは生存機能しているが、天然歯(特に失活歯)が破折などで抜歯され喪失していくとのこと。40歳代に比べ、50-60歳では劇的に歯の喪失が進むため、要介護を見据え戦略的抜歯を積極的に行うことにより、Fixtureの本数を増やさない努力が必要であると報告されていました。
2) 要介護を見据えた対策;
将来介護が必要となった時でもインプラントのメインテナンスができるような低侵襲治療を選択することが重要である。ほとんどの方が有病者となる高齢化社会ではこれが大きなテーマになってくるであろうと感じました。
3) 新しいFixture;全身疾患をもつインプラント患者に骨造成手術やサイナスフロアエレベーションなどの侵襲の高い手術を選択するのではなく、低侵襲手術にとどめられるような短いインプラントや細いインプラントを使用することが好ましいと思われます。Straumann では骨高径が低い顎堤に長径4mmのショートインプラントが開発されております。海外ではすでに臨床使用され5年生存率が92,2%と報告され、良好な治療成績がでております。これがうまく適用されればサイナスフロアエレベーションの必要性はかなり低くなります。ただ、まだ国内ではまだ販売されておりません。
また、骨幅の狭い骨には新しいナローインプラントが開発されております。機械的強度をあげるためFixtureの材質を改良し、これまでのグレード4のチタンではなく、Titanium-zirconium合金(Roxolid)にて強度を高めております。その強度は世界3大インプラントといわれているストローマン、ノーベル、アストラのなかで最大の強度を有しております。これを使用すれば低侵襲手術がおこなえます。
4) 新しい上部構造とその固定法;これまでインプラント上部構造とインプラントを固定する方法はセメント固定かスクリュー固定のどちらかでしたが、どちらでもない新しい固定法と補綴法が開発されております。これも要介護を見据えたからこそ開発されたものと思われます。
5)から9)は省略いたします。
本コングレスで感じたことは、非常に長い時間軸で治療法が検討されていることに関心し、本当にインプラントのこと、患者さんのことをよく考えている方々であるとに感銘いたしました。