2015年6月5日 森歯科医院 院長 森光伸
若年者で位置異常のある第二大臼歯を積極的に抜歯し、第三大大臼歯(智歯;親知らず)をその抜歯部位に咬合誘導させ、正常咬合させる術式があります。この術式で便宜抜歯の紹介をいただく歯列矯正歯科医は20年ほど前からこのシステムを導入し多くの経験をお持ちです。わたしも時折、経過を拝見し、良い治療法であると思っております。
第二大臼歯を正常位置に矯正するにはかなり手間がかかります。また、いずれかのタイミングでその後方の埋伏智歯を抜歯する必要性が生じてきます。しかし、前述の術式は比較的簡単で、しかも歯列矯正が不要な時もあり、患者さんにとっては身体的にも経済的にも負担の少ない選択枝と考えます。ポイントは適応時期かと思われます。
その一例を報告いたします。
患者;13歳、男児。
初診;2012年3月。
主訴;咬合不全。
現症;左側上顎第二大臼歯が頬側転位し、下顎とは咬合接触なし。左側上顎第三大臼歯は完全骨性埋伏智歯。
処置および経過;矯正歯科医から左側上顎第二大臼歯の抜歯依頼を受け、便宜抜歯施行。その後、歯列矯正することなく経過。3年後の2015年5月、16歳になり他部位の智歯周囲炎とう蝕で当院受診し、現在、他部位の智歯抜歯開始中。前述の左側上顎第三大臼歯(智歯)は第二大臼歯の正常位置に完全移動し、第一大臼歯にコンタクトして、下顎とも正常咬合しておりました。
以下はX線写真です。
<13歳> 2012年3月 初診時
左側上顎第二大臼歯を抜歯;黒い矢印
左側上顎第三大臼歯(智歯)温存;赤い矢印
<16歳> 2015年5月
左側上顎第三大臼歯(智歯)は第二大臼歯相当部位に移動
移動した左側上顎第三大臼歯(智歯);赤い矢印
他の智歯は現在抜歯開始中