インプラント

歯科インプラントとは

顎の骨の中に金属(チタン)の柱を埋め込み、その上に土台を作成して、セラミックの歯を装着したものです。 う歯や事故などで歯を失った方、義歯では満足いかない方などに適応され、自分の顎でしっかり噛むことができます。

インプラントは3つの部分から成り立っています。

フィクスチャー:歯根のような役割を果たし、顎骨内に埋め込んだチタン材の部分です。歯肉より下にあります。

アバットメント:土台に相当する部分で、フィクスチャーの上にネジで固定します。歯肉より上にあります。

上部構造:歯冠に相当する部分で、セラミックで作成します。インプラントの最上部に存在します。

顎骨の状態がインプラント治療に適しているか否かを診査するために、術前にCT撮影をお願いしております。CT撮影は病診連携した近隣の病院に依頼し、当院であらかじめ先方の病院に撮影日時を予約いたします。

インプラント治療

インプラント関連外科

インプラント治療をしたいが顎の骨が少なくあきらめていた方に顎の骨を少し増やして、インプラント治療を可能にする手術です。

歯槽骨造成

歯槽部の骨を少し増やす手術です。
骨吸収の比較的少ないケースでは埋入予定部位の周囲骨を採取するので、同一術野で済み、傷口を複数作ることはありません。軟組織の巻き込をブロックする膜を使用します。

骨移植

下顎枝(智歯の奥の骨)から骨を採取し、埋入予定部位に骨移植して骨を増やします。埋入予定部位の骨の厚みが非常に薄い方、高さが低い方に適応され、歯槽骨造成よりはやや大がかりな手術です。骨吸収の大きなケースに適応します。

ソケットリフト

上顎洞(鼻の横にある空洞)との距離が近く、適度の長さのフィクスチャーが埋入できない時などに骨を上顎洞側に押し上げることでフィクスチャーの埋入を可能にする手術です。

インプラント治療の流れ

A.術前検査

A-1) カウンセリング

来院者の希望をお聞きしておおまかな治療計画、期間、費用の情報提供をおこないます。

 

 

A-2) 一般的な検査

口腔内の診査と一般的な検査をおこないます。一般的な検査としてレントゲン撮影、歯の模型の型取り、口腔内写真撮影をおこないます。

この時期にインプラント治療の前処置として喫煙者や重度の歯周病がないか確認し、歯周病やう歯などあれば事前に治療いたします。

A-3) やや精密な検査(診断用ステント付きX線写真)

歯型取りをして石膏の模型を作製します。噛みあわせの診断とおおまかな骨の幅を確認するために必要です。これをもとに診断用のステント(埋 入するインプラント体のサイズや位置を決定するためのガイドです。樹脂と金属で作成します。)を作成し、これを口腔内に装着して再度X線写真を撮影いたし ます。石膏模型とステント入りX線写真の情報で再度カウンセリングいたします。これはインプラント治療の開始を決断された方にのみおこないます。

A-4) 精密検査

さらに、精密検査としてCT撮影をおこないます。

CTは当院と連携する大病院で撮影をおこないます。予約は希望日をお聞きしたうえで、当院と病院のと間で連絡をとります。撮影日が決定した ら来院者自身で紹介状を病院に持参していただきます。病院内の歯科を経由することなく直接放射線科へ受付し、当日に撮影終了いたしますので病院への通院は 一度ですみます。

インプラント治療の流れ

B.治療計画

B-1) 治療計画の立案

一般的検査と精密検査で得られた結果をもとに具体的な治療計画を立案いたします。

・ 体の健康状態が手術に適しているか否かを確認します。
・ 模型、レントゲン写真やCTで咬みあわせ、骨の量・形状、埋入位置を決定します。
・ 埋め込むインプラント体(Fixture)を決定いたします。
・ 単純な手術でいいのか、あるいは追加の手術が必要なのかを判断いたします。
・ 模型上で手術用ステントを作成いたします。

B-2) 説明と同意

最終的な治療計画を来院者にご説明いたします。治療計画に同意いただければ、治療費も含めて記載した同意書に署名いただきます。

B-3) 手術日の決定

インプラント治療の流れ

C.手術

C-1) 手術当日の術前

・ 当日朝の食事飲水の制限はございません。ただ、前日からの喫煙と飲酒は控えてください。できれば手術前後2週間は禁煙していただくといいでしょう。
・ インプラント手術を含めた口腔外科手術の際には前日までにあらかじめ歯石除去や口腔内のクリーニングをおこないます。これは細菌の少ない状態をつくることにより、術後の痛み、腫れ、感染防止を最小限に抑えるためです。
・ 30分程前には来院いただき、口腔内の清掃をおこないます。
・ 診療器具はすべて滅菌され、滅菌シーツの上におかれた滅菌トレーの上に置かれています。
・ 手術室は十分に清潔にされた状態に保たれていますので器具に触れないようにしてください。
・ 手術をおこなうもの(術者と手術助手)は滅菌ガウンと滅菌手袋をして手術室に入室します。
・ 手術を受ける方は滅菌シーツに包まれ、視界を塞がれますが過度に緊張しないでください。手術中も会話はできます。

C-2) 術中;一次手術(術式の簡単な説明)

ここでは2回法の流れで説明しますが、当院では基本的には1回法で手術いたします。
1回法か2回法かは骨量によって決定されます。

1回法


2回法


1.局所麻酔:
注射時の痛みを和らげるために、塗り薬の表面麻酔をおこないます。これは手術室入室前にあらかじめおこなっておきます。その後、エピネフリン含有の2%キシロカインを歯肉に局所麻酔します。

2.歯肉歯槽粘膜の切開、剥離:
手術用ステントを装着し、インプラント体(Fixture)の埋入位置を確認します。予定部位をメスで粘膜切開し、その後粘膜剥離します。

3.ドリリング:

十分に注水しながら低回転のドリルで骨を少しずつ削ります。ドリルをゆっくり回転させ、よく冷えた注水をおこなうことで骨のやけどを防ぎ、骨細胞の破壊を防ぎます。この善し悪しでも、経過に影響をあたえることがあります。

4.洗浄:

ドリリングしたところを生理食塩水で洗浄し、歯の削りかすや血液唾液などの汚染物を洗い流します。

5.インプラント体(Fixture)の埋入:
Fixtureを骨内に埋め込みます。

6.縫合:
細い縫合糸で粘膜を縫合します。この際、骨が薄くてFixtureの埋入条件が悪い ために骨移植して骨造成を必要とした場合などは完全にインプラント体(Fixture)を粘膜内に埋め込む必要があります。この場合には、後日、歯肉に小 さな穴をあける二次手術が必要となります。
しかし、Fixtureの埋入条件がよければ、そのまま蓋となる金属を歯肉の外に出すことができ、二次手術は不要となります。その結果、治療期間もかなり短くすることができます。

7.X線写真を撮影し、埋入状態を確認します。

8.手術後の注意事項(後述)を説明して、手術終了です。

C-3) インプラント埋入手術時間

・ 手術時間は通常の手術だけであれば30分程度です。
・ 骨の再生治療をあわせて行った場合でも1時間から1時間半で完了します。
・ 多数のインプラントを埋入する場合には2時間以上かかることもあります。
・ 二回法の二次手術は時間は約30分くらいです。

C-4) 入院の有無

入院は必要ありません。骨の再生治療を行った場合でも、入院は不要です。

C-5) 術後(一次手術)注意点

来院日
1.病状の確認のために翌日に洗浄に来院いただきます。
2.術後1週から2週間の間に抜糸いたします。

麻酔が切れる時間帯
麻酔は約2時間効いています。その後、麻酔効果は消失しはじめ痛みが生じてきますので鎮痛剤を内服してください。

麻酔の切れる時間帯の注意事項
麻酔液には麻酔効果を持続し、局所の出血を少なくするために、エピネフリンという薬が入っています。これは血管を収縮する役割を担っています。
麻酔が切れ始める頃には、この血管収縮薬の効果もなくなってくるため、細くなっていた血管が通常に戻ります。血液の流れがよくなり、傷口から血がにじんできますが心配する必要はありません。

術後に薬を飲むタイミング

麻酔が切れると痛みがでてきますので鎮痛剤を内服してください。理論的には抗菌剤はできるかぎり早めに内服したほうがよいのですが、現実的には圧迫止血ガーゼをはずした時に内服するのが妥当かと思います。

・ 術後当日は運動と飲酒は控えて下さい。お風呂は浴槽に入らなければ、シャワー程度なら可能です。
・ 食事は麻酔がきれたらいつでも摂食可能です。ただ、辛いものなどの刺激物はできるだけ控えてください。
・ 術直後の数時間は冷やすといいでしょう。しかし、冷やしすぎると傷の回復が遅れます。また、腫れてから冷やすと固くなって、なかなか腫れがひいてきませんので注意してください。
・ 手術当日はうがいをしすぎないようにしてください。血のかさぶた(血餅)がとれて、血が止まりにくくなることがあります。しかし、翌日からはよくうがいをしてください。
・ 喫煙は血管を収縮し、傷の治りを悪くします。控えてください。
・ 骨移植など複雑な手術をされた方はまれに一時的に口が開けにくくなることがあります。これは血液が開閉する筋肉に波及したためで、血液はしだいに吸収され、顔の腫れがひく頃には改善していきます。
・ 歯磨きは手術後専用の歯ブラシを使用してください。当院で販売もしています。
・ 色白の女性にはごくまれに皮下出血(青アザ)がでることがあります。1週間ほどで黄色くなり、2週間で消失します。
・ 義歯を使用されている方は手術部位に負担がからないよう、1週間程は義歯をなるべく外しておいて下さい。
・ 上顎奥歯の手術を受けられた方へ・・・
まれに鼻血が出ることがあります。ソケットリフト、サイナスリフトを受けられた方は1か月程度強く鼻をかむことや激しいくしゃみは避けて下さい。

インプラント治療の流れ

D.待機期間(インプラントと骨の結合安定期間)

インプラント(Fixture) と骨が結合(インテグレーション)するのを待ちます。待機期間は骨の状態、部位・術式・インプラントの種類などにより異なりますが、おおざっぱにいえば3か月程と考えていただければいいかと思います。

インプラント治療の流れ

E.二次手術術中(1回法の場合には不要な手術です)

骨と結合したインプラントの一部を歯肉から露出させます。

インプラント治療の流れ

F.二次手術術後

手術侵襲は一次手術よりかなり少ないです。術後注意事項は一次手術後の注意事項を参考にしてください。

インプラント治療の流れ

G.上部構造

G-1) 印象(型取り)

・ 歯肉を安定させるためのヒーリングアバットメントを除去します。
・ Fixture内部を洗浄して、印象用アバットメントを装着します。
・ その後、シリコン印象剤で型をとります。
・ 作成する上部構造のセラミックの色合わせをします。
・ はずしたヒーリングアバットメントを再度装着します。
・ アバットメントとセラミックの上部構造は2週間くらいで仕上がってきます。

G-2) アバットメント(土台)の装着

歯肉の治癒と形態が整うのを待って土台(アバットメント)を装着します。

前歯部などで審美的要求の高い場合、臼歯部(奥歯)で咬合(咬み合わせ)の経過をみる必要がある場合などは仮歯にして審美性と機能性の確認をします。審美的あるいは機能的に問題なければ上部構造の作成をおこないます。

G-3) 上部構造(セラミックの歯)の装着

作成された上部構造を口の中で微調整を行います。被せ物は術者によって着脱可能なようにするために、仮の接着剤で仮止めするか、ネジで連結します。最終的な接着剤で合着しないのは、上部構造をはずしてメインテナンスをおこなうためです。

最終的な上部構造(白いセラミックの歯)が装着されました。

インプラント治療の流れ

H.メインテナンスの流れ

治療が終わった後はまず1週間後に定期検査をします。土台と被せ物のクリーニング、ネジの締まり具合を調整します。その後はだいたい1か月、3か月、6か月後に定期検査をします。

痛みや腫れについて

1)手術中と手術後の痛みについて

インプラント手術は通常局所麻酔で行いますが、手術中に痛みを感じることはまずありません。手術後は麻酔がきれると痛みがでてきますが、鎮痛剤を飲めば忘れる程度の痛みです。

2)手術後の腫れについて

・埋入したインプラントの本数が少ない場合や骨増生を行わない通常の手術の場合は少し腫れる程度です。
・インプラントの本数が多い場合や、骨を増やす処置(骨移植、サイナスリフト、骨造成など)を行った場合は腫れてしまいます。
・腫れは術後三日目がピークで、以降はゆっくりひいてゆき、約一週間後にはほぼ消失します。

3)清潔な環境が痛みを少なくします。

人体は細菌やウィルスなどの外敵が体内に入り込むと、それに対抗するために大きな炎症反応が現れます。強い痛みや発熱はその反応のあらわれであり、あながち悪いこととはいいきれません。
インプラント治療は、きちんとした清潔な滅菌環境で治療され、体内に入るインプラントも清潔なものですから、それらの痛みの反応が少ないと考えられています。ただ、個人差があり、骨の状況や処置の大きさによって体の反応は異なりますので、投薬や治療後の管理が大切です。

4)清潔な環境が痛みを少なくします。

痛みを感じることはまずありません。ただし、Fixtureが歯周病菌に感染し動揺している場合には歯周病で歯が動く時と同じような痛みが でることはあります。こうなれば、そのFixtureは使命を終えたものとして撤去することが好ましいとおもいます。その後も、骨の状態がさほど悪くなければ再度インプラント治療をすることが可能です。

インプラント治療の料金

基本手術から
上部構造まで
単純埋入 ¥367,500 1本あたり
追加手術 ソケットリフト ¥52,500 1本あたり
追加手術 骨移植 ¥157,500 手術1回あたり
追加手術 骨造成 ¥105,000 手術1回あたり
追加材料 メンブレン ¥52,500 手術1回あたり
人工骨 ¥42,000 手術1回あたり
ピン ¥2,100 1個あたり
検査 咬合模型 ¥0 手術1回あたり
ステント ¥10,000 手術1回あたり
X線写真 ¥5,000 手術1回あたり
CT 約¥15,000 手術1回あたり

インプラント治療の医療費控除

本人や家族が病気になり医療費を支払った場合には、支払った医療費のうち一定の金額を所得から控除することができます。これを「医療費控除」と言います。インプラント治療に関しても対象となりえます。

1)医療費控除の対象となる医療費の要件

対象となる医療費はその年の1月1日から12月31日までに、本人および本人と生計を一にする家族のために実際に支払ったものです。未払いのものは請求書があっても対象とならないので注意しましょう。

2)インプラント治療の医療費控除の金額


3)インプラント治療で医療控除を受けるための手続き

医療費控除に関する事項を記載した確定申告書を提出してください。医療費控除は年末調整では受けられないので、サラリーマンの方でも確定申告が 必要です。その際、医療費の支出を証明する書類(たとえば領収書など)については、確定申告書に添付するか提示することが必要です。また、給与所得のある 方はこのほかに源泉徴収票(原本)も必要です。

 

 

リスク/インプラント周囲炎、メンテナンスが必要