2013年10月27日 森歯科医院 院長 森光伸
<概念>
歯根嚢胞は歯の感染により歯根部の骨内に膿や滲出液などの内容液を含んだ袋状の病巣で、歯肉腫脹や咬合痛や歯の動揺が生じる疾患です。放置すると体力が低下した際に、顎骨内で拡大して隣接する歯や周囲組織に障害が生じることがあり、治療が望まれます。治療は以下の方法が選択されます。
<治療法>
1)保存的治療(根管治療にて歯を温存);病巣が歯冠より小さく、歯の動揺がないケースなどに適用されます
2)外科的治療1(抜歯して嚢胞摘出);歯冠より大きな病巣で歯の動揺があり、保存が困難なケースに適用されます。
3)外科的治療2(外科的に嚢胞摘出や根尖切除して歯を温存);歯冠より大きな病巣でも、歯の温存を希望されるケースで選択されます。1)保存的治療(根管治療にて歯を温存)と2)外科的治療1(抜歯して嚢胞摘出)の中間的治療として選択されますが、難易度と身体的侵襲は他の治療より高くなります。
今回は外科的に歯根嚢胞を摘出し、歯を温存したケースを紹介いたします。
<A;初診時>
下顎前歯部の歯肉粘膜腫脹と瘻孔を認める。
術前X線写真;未根管治療歯が存在し、根尖に歯4本分のX線透過像を認める
<B;術前準備としての根管治療>
根管治療後のX線写真;未治療部を根管治療して根管充填施行。根尖部のX線透過像に変化は認めない。
<C;手術>
手術直後;嚢胞摘出し根尖を一部切除。
手術直後のX線写真;病巣摘出窩の影響でX線透過像は術前より一過性に拡大する。根尖は一部切断され、根が少し短くなっている。
<D;術後経過>
術後1か月
術後1か月のX線写真;術直後より透過性が改善している。
術後4か月のX線写真;X線透過像は一部認めるが、術前に比較するとかなり縮小傾向
術後約2年のX線写真;X線透過像はほぼ消失し骨化良好
術後3年のX線写真;X線透過像は消失し骨化良好