血栓の基礎知識と抗血栓療法患者の抜歯に関するガイドラインの報告-2015年版&2010年版の概要-;2016年7月Monic club講演

2016年7月16日 滋賀県 草津市 森歯科医院 院長 森光伸
 2016年7月13日にMonic Clubにて「血栓の基礎知識と抗血栓療法患者の抜歯に関するガイドラインの報告 – 2015年版&2010年版の概要 – 」を講演いたしました。講演の要旨は以下のとおりです。
A < 血栓の基礎知識 >
1)血栓と止血;
血栓とは血管内の血液が何らかの原因で塊を形成することで、主に血管壁が傷害されることにより起こる。その役割は止血で、主役はフィブリンと血小板である。
健康な血管は血管内皮に覆われ血栓はできないが、血管内皮が損傷すると血小板が凝集し、損傷部に血小板が粘着する。さらに、血小板同士が集まって塊を作り損傷部を塞ぐ(血栓)。この塊をより強固なものにするため、凝固因子が働き、フィブリン糊が血栓をからめて強くし、止血する。
2)線溶作用;止血完了後、損傷部位が修復すると血栓は消える。

3)血栓症;その線溶作用が働かずに血栓が肥厚し、血管を塞ぐと、血栓下位の部位で虚血や梗塞が起こる。(脳梗塞、狭心症、心筋梗塞、深部静脈血栓症、など)

4) 血栓塞栓症;血栓がはがれて別の場所の血管をふさぐこと(肺塞栓症など)

5)血栓形成の三要因




1.血管内皮細胞の傷害;動脈性血栓;喫煙や高脂血症症、高血圧症、肥満、糖尿病などが原因で血管内皮細胞が傷つき、そこから血栓が生じる。

2.血流の緩慢;静脈性血栓;ギプス固定や長時間の同じ姿勢による血管の圧迫、血流の緩慢または停止した場所や、動脈瘤、静脈瘤、心臓内など血流が渦巻く場所に血栓が生じやすい。

3.血液性状の変化(粘稠度の増加、繊維素溶解活性低下、血液凝固因子の増加);動静脈血栓;高脂血症や脱水症状時、妊娠・出産時、老齢などでは血液成分が変化しているため血栓が生じやすい。

6)血栓形成の主因子;フィブリン産生に関わる凝固系血小板





生体内には血小板のみでできた血栓、フィブリンのみでできた血栓は存在せず、凝固カスケードと血小板は連動して血栓を形成している

7) 血栓の種類




) 赤色血栓 主に静脈内に出来る血栓。赤血球がフィブリンの中に多く取り込まれるため赤く見える。機序は血液凝固反応が関わっている。動脈原性塞栓などに多い。

2)白色血栓 主に動脈内に出来る血栓。主に血小板が関わっている。閉塞性動脈硬化症、バージャー病などに多い。

3) 混合血栓 白色血栓、赤色血栓両方が混在している。高脂血症などに多い。

4) 血小板・フィブリン血栓・硝子様血栓 フィブリンと少量の血小板が主に関わっている。火傷、伝染性疾患時に小血管や毛細血管にみられる。

B <抗血栓療法>

1) 抗血栓(薬)療法の種類と目的と機序

1. 抗凝固(薬)療法;

・血管が閉塞されないように血栓形成を抑制する薬と療法

 フィブリン形成を阻止し、赤色血栓を阻害する薬剤

 人工弁置換術後、心房細動、深部静脈血栓症、肺梗塞など血流の乱れや鬱滞による血栓症に適応

2. 抗血小板(薬)療法;

 血管が閉塞されないように血栓形成を抑制する薬と療法

 血小板凝集を阻害し、白色血栓を阻害する薬剤

 動脈硬化巣での血栓形成を防止する。狭心症、心筋梗塞、脳梗塞など動脈で起こる血栓症に適応

3. 血栓溶解(薬)療法





形成された血栓を溶解除去する薬と療法

2)抗凝固薬の種類




  1. ビタミンK依存性凝固因子合成阻害薬;・クマリン誘導体・ ワルファリン、アセノクマロール、フェニンジオン・ 凝固因子のうち第II因子 (プロトロンビン)、第VII因子、第IX因子、第X因子合成の補因子 ビタミンKに対する拮抗作用により抗凝固作用をもつ。・ 効果が最大になるまでに投与開始から4872時間かかる。・即効性を求めるならばヘパリンの併用が望ましい。・抗凝固効果の判定と出血危険性を判定するため、定期的にPTINR時間を測定する必要がある。
  2. 2。直接トロンビン阻害薬;トロンビンの競合阻害作用を持ち,フィブリノゲンのフィブリンへの転換を抑制。? ダビガトラン経口投与。ワルファリンのような定期的効果判定の必要がない (裏を返せば、効果判定の手段がないともいえる)? アルガトロバン経静脈投与

3. 第Xa因子阻害薬;トロンビンの活性化を促進する第Xa因子 (活性化第X因子) を阻害する物質。補因子なしに阻害する直接阻害薬と、補因子としてアンチトロンビンIIIを必要とする間接阻害薬がある。




3-1直接第Xa因子阻害薬経口投与;・リバーロキサバン・エドキサバン・アピキサバン

3-2間接第Xa因子阻害薬皮下投与;・フォンダパリヌクス

4. ヘパリンとヘパリン類似物質;ヘパリン;豚や牛の腸から抽出される。アンチトロンビンIIIの活性作用により抗凝固作用を持つ。血管内投与を行う。

5. 体外で用いられる抗凝固薬;目的1.血漿と血球を分離。2. 液体としての流動性を残す。3. 血液凝固因子を消費させない

 EDTA ; 二価の金属イオン(カルシウムイオンもこれである)をキレートする。

クエン酸 ; クエン酸三ナトリウムとして用いられ、カルシウムイオンと結合する。

シュウ酸 ; クエン酸と同様。

フッ化ナトリウム ; NaF。カルシウムイオンと結合。解糖系を阻害するので血糖測定に用いられる。

 ACD ; Acid Citrate Dextrose Solution。クエン酸とデキストロースを含む。輸血用保存血液に添加される。

他薬との飲み合わせ

ワルファリンで相互作用を起こす代表的な薬;

・作用増強;抗生物質・解熱鎮痛剤など

・作用減弱;ビタミンKの含まれる薬(骨粗鬆症治療薬の一部)、抗てんかん薬など

抗凝固薬の利用法

血液凝固を阻害する薬物

・体内投与;血栓塞栓症の治療と予防カテーテルの閉塞防止に用いる

・体外投与;人工透析装置や人工心肺装置の体外回路の凝固防止。輸血用血液の保存。






  血液検査





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