3)血栓症;その線溶作用が働かずに血栓が肥厚し、血管を塞ぐと、血栓下位の部位で虚血や梗塞が起こる。(脳梗塞、狭心症、心筋梗塞、深部静脈血栓症、など)
4) 血栓塞栓症;血栓がはがれて別の場所の血管をふさぐこと(肺塞栓症など)
5)血栓形成の三要因
1.血管内皮細胞の傷害;動脈性血栓;喫煙や高脂血症症、高血圧症、肥満、糖尿病などが原因で血管内皮細胞が傷つき、そこから血栓が生じる。
2.血流の緩慢;静脈性血栓;ギプス固定や長時間の同じ姿勢による血管の圧迫、血流の緩慢または停止した場所や、動脈瘤、静脈瘤、心臓内など血流が渦巻く場所に血栓が生じやすい。
3.血液性状の変化(粘稠度の増加、繊維素溶解活性低下、血液凝固因子の増加);動静脈血栓;高脂血症や脱水症状時、妊娠・出産時、老齢などでは血液成分が変化しているため血栓が生じやすい。
6)血栓形成の主因子;フィブリン産生に関わる凝固系と血小板
生体内には血小板のみでできた血栓、フィブリンのみでできた血栓は存在せず、凝固カスケードと血小板は連動して血栓を形成している
7) 血栓の種類
1) 赤色血栓 ;主に静脈内に出来る血栓。赤血球がフィブリンの中に多く取り込まれるため赤く見える。機序は血液凝固反応が関わっている。動脈原性塞栓などに多い。
2)白色血栓 ;主に動脈内に出来る血栓。主に血小板が関わっている。閉塞性動脈硬化症、バージャー病などに多い。
3) 混合血栓 ;白色血栓、赤色血栓両方が混在している。高脂血症などに多い。
4) 血小板・フィブリン血栓・硝子様血栓 ;フィブリンと少量の血小板が主に関わっている。火傷、伝染性疾患時に小血管や毛細血管にみられる。
B <抗血栓療法>
1) 抗血栓(薬)療法の種類と目的と機序
1. 抗凝固(薬)療法;
・血管が閉塞されないように血栓形成を抑制する薬と療法
・ フィブリン形成を阻止し、赤色血栓を阻害する薬剤
・ 人工弁置換術後、心房細動、深部静脈血栓症、肺梗塞など血流の乱れや鬱滞による血栓症に適応
2. 抗血小板(薬)療法;
・ 血管が閉塞されないように血栓形成を抑制する薬と療法
・ 血小板凝集を阻害し、白色血栓を阻害する薬剤
・ 動脈硬化巣での血栓形成を防止する。狭心症、心筋梗塞、脳梗塞など動脈で起こる血栓症に適応
3. 血栓溶解(薬)療法
・ 形成された血栓を溶解除去する薬と療法
2)抗凝固薬の種類
- ビタミンK依存性凝固因子合成阻害薬;・クマリン誘導体・ ワルファリン、アセノクマロール、フェニンジオン・ 凝固因子のうち第II因子 (プロトロンビン)、第VII因子、第IX因子、第X因子合成の補因子 ビタミンKに対する拮抗作用により抗凝固作用をもつ。・ 効果が最大になるまでに投与開始から48ー72時間かかる。・即効性を求めるならばヘパリンの併用が望ましい。・抗凝固効果の判定と出血危険性を判定するため、定期的にPTINR時間を測定する必要がある。
- 2。直接トロンビン阻害薬;・トロンビンの競合阻害作用を持ち,フィブリノゲンのフィブリンへの転換を抑制。? ダビガトラン;経口投与。ワルファリンのような定期的効果判定の必要がない (裏を返せば、効果判定の手段がないともいえる)。? アルガトロバン;経静脈投与
3. 第Xa因子阻害薬;
3-1直接第Xa因子阻害薬;経口投与;・リバーロキサバン・エドキサバン・アピキサバン
3-2間接第Xa因子阻害薬;皮下投与;・フォンダパリヌクス
4. ヘパリンとヘパリン類似物質;・ヘパリン;豚や牛の腸から抽出される。アンチトロンビンIIIの活性作用により抗凝固作用を持つ。血管内投与を行う。
5. 体外で用いられる抗凝固薬;
・ EDTA ; 二価の金属イオン(カルシウムイオンもこれである)をキレートする。
・クエン酸 ; クエン酸三ナトリウムとして用いられ、カルシウムイオンと結合する。
・シュウ酸 ; クエン酸と同様。
・フッ化ナトリウム ; NaF。カルシウムイオンと結合。解糖系を阻害するので血糖測定に用いられる。
・ ACD ; Acid Citrate Dextrose Solution。クエン酸とデキストロースを含む。輸血用保存血液に添加される。
他薬との飲み合わせ
ワルファリンで相互作用を起こす代表的な薬;
・作用増強;抗生物質・解熱鎮痛剤など
・作用減弱;ビタミンKの含まれる薬、(骨粗鬆症治療薬の一部)、抗てんかん薬など
抗凝固薬の利用法
血液凝固を阻害する薬物
・体内投与;血栓塞栓症の治療と予防。カテーテルの閉塞防止に用いる
・体外投与;人工透析装置や人工心肺装置の体外回路の凝固防止。輸血用血液の保存。
血液検査